〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿三丁目9番25号
会費: 一般 1,500円、学生 500円
(飲み物は各自ご持参ください)
参加を希望される方は、以下まで連絡をいただければ幸いです
連絡先: 矢倉英隆(she.yakura@gmail.com)
よろしくお願いいたします
プログラム
(1)13:00-14:00 矢倉英隆
シリーズ「科学と哲学」⑧ プラトンと医学
今回は、プラトンが医学をどのように考えていたのかをテーマにして省察する予定です。前回紹介した『ティマイオス』に記述されている人体の解剖学や生理学とはどのようなものだったのか、心身二元論を唱えるプラトンは医学的視点から魂と身体の関係をどのように見ていたのか、医学と倫理との関係、さらに医学と社会・国家との関係をどのように考えていたのかなどの視点からプラトンの思想を見直します。
(2)14:00-15:20 武田克彦
神経心理学の方法
病気や事故などで脳が損傷されたため言語・行為・認知・思考・記憶・注意等の障害が生じることがある。それを総称して神経心理学的症状とよぶ。これらを研究する分野である神経心理学に対しては、「実体のない学問である」とか「今のように言語でそれぞれの症状が規定されるのではなく、いつか物質(DNA、粒子)の言葉で記述される神経心理学が新たに作り直されなくてはならない」などという言葉が投げかけられることがある。現代の風潮として、ある学問があまりに記述的で現象にとらわれていると判断されると、そのメカニズムを論じる段階に至っていないと考えて、それを科学的でないとみなすところがある。
この論考では神経心理学の方法として3つの方法を紹介する。1は還元主義的な方法である。還元主義的な考え方は、たとえばデカルトの「ものを知るには最小の単位に分けよ」という考えに由来する。心理学と生物学との間に階段をかけるという研究の1つに、脳機能マッピングの研究などがあり、その研究方法などを述べる。ただこの還元主義的方法は、脳から心へという一方向性とみなされがちであるが、心(意識)から脳の物理学的へという方向もあり、相互作用的であることを述べる。2は、神経心理学それ自身のレベルでの研究であり、基本的でないレベルで重要な規則性を確認することからはじまって、基礎をなすより基本的なメカニズムを理解することへと進む研究がそれである。代表的なものとして、スペリーによる分離脳の研究を取り上げる。さて行動の理由が自然科学的な因果法則的説明だけで述べられるとすると、一人称としての行為者の主体性が三人称的な脳の因果的なプロセスに還元されてしまうことになる。人間科学に固有な方法として理解・解釈の方法があるが、ここでは一人称の観点に立つ「了解」を取り上げる。了解とは、意味的関連あるいは個人が他者の心理状態や心理的出来事の意味に対して持ちうる心理的直感のことである。3は、この了解を神経心理学に持ち込んだ方法である。
(3)15:30-16:50 市川 洋
社会の中の科学と科学コミュニケーション
我が国を含めた世界の科学技術を振興させるためには、社会が科学技術振興を支持・支援する仕組みと、科学技術開発研究を担う科学技術研究者・機関が社会の負託に応える仕組みが互いに相補的に噛み合う必要がある。しかし、最近では、論文捏造等の研究不正件数が増えるとともに、陰謀論やニセ科学に染まる人も増えている。また、選挙投票に際して、事実や論理よりも「自分」の感覚・感情を重視する人々が多数であるという現実を兵庫県知事選挙で目の当たりにしている。これらのことは、科学研究について関心を持たない人、「科学的な態度」を身に付ける必要性を感じていない人が社会の多数を占めていることと関連しているように思われる。このような状況が続くと、科学技術の発達は停滞する。
今回の発表では、2000年代から、海洋科学研究と社会を結ぶ海洋科学コミュニケーション活動をおこなってきた立場から、変わりゆく現代社会における科学と科学コミュニケーションのあり方についての私論を述べる。
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