第13回 サイファイフォーラムFPSS のお知らせ
日時: 2025年3月8日(土)13:00~17:00
会場: 日仏会館 509会議室
(新しい会場になりますので、ご注意ください)
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿三丁目9番25号
会費: 一般 1,500円、学生 500円
(飲み物は各自持参してください)
参加を希望される方は、以下まで連絡をいただければ幸いです.
連絡先: 矢倉英隆(she.yakura@gmail.com)
よろしくお願いいたします.
プログラム
(1)13:00—14:00 矢倉英隆
シリーズ「科学と哲学」⑦ プラトンの宇宙観
今回は、プラトンが宇宙の生成、維持についてどのように考えていたのかについて、対話篇『ティマイオス』などを参考にしながら分析します。プラトンの考えによると、この宇宙は「デミウルゴス」と呼ばれる神的な職人によって理想的なイデアに近い形が作り出されたとされます。そこで働くのが、無秩序なカオスから調和のある宇宙へ導く理性(nous)です。現代科学では排除されている創造主の関与や、ある方向に進むという目的論的思考が見られます。また、プラトンの学園アカデメイアの入り口には「幾何学を知らざる者、この門をくぐるべからず」とのプレートが掲げられていたと言われますが、形を作る過程で重要になるのが数学、とりわけ幾何学であるとプラトンは考えていました。その具体的内容はどんなものだったのか、さらにプラトンの宇宙観が含意する哲学的・倫理的側面についても考える予定です。
(2)14:00—15:20 細井宏一
「人文科学」と「自然科学」との対話とその歴史
● 古代から、宗教改革期を経て、現代へと至る人類の歴史の中で、各時代を代表する「人文科学(哲学・神学・倫理学)」や「自然科学(物理学・数学・天文学)」の著名な学者達は、2つの科学をどのように考えてきたのかを辿ってみる。
● そして、これまで人類が営々として紡いできた「知」の姿を、両科学の関係に着目しながら、時代的変遷も含めてあぶり出してみたい。
● 最後に、これまでの膨大な両科学の知を学んだ人工知能AIは、両科学とその関係をどう見るのかについて、最近のAIにおける機能「RAG/Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)」も用いて調査した検討結果を紹介する。
(3)15:30―16:50 岩倉洋一郎
科学は自らの発展を制御できるのか?
科学が哲学から独立してから、原子力発電や人工知能, ヒトに対する遺伝子改変など、多くの倫理的、社会的問題を抱え込むことになったが、これらの問題は科学自らの努力によって解決できるのであろうか。あるいは哲学、倫理の様な別の枠組みで考える必要があるのか、本フォーラムで議論してみたい。
最初、議論の叩き台として、人に対する遺伝子改変の問題をLee SiverのRemaking Eden(1997)を参考にして一緒に考えてみたい。彼自身は倫理的問題を正面から取り上げているわけではないが、あくまでも科学的にこの技術がもたらす可能性を予測することによって、その是非を我々に問いかけているように見える。彼に依れば、遺伝子改変は最初は遺伝病を治療したり、特定の病原体に対する耐性を獲得したりするために行われることが予想されるが、徐々に身体的能力や知能の向上、さらには超能力を得るために遺伝子改変が行われることを予測している。遺伝子改変を重ね、ついには染色体数まで変わってしまうと、もはや従来の人類との間で子孫を作ることができない新種の人類が誕生することになり、従来の人類との間で戦争が起こることさえ、考えられないことではない。彼のこのような科学的予測は、かなりの説得力を持ってこの技術を無批判にヒトに対して用いることの危険性を指摘してくれたように思える。
しかし、例えば人工知能の我々の未来に及ぼす影響について、どのような科学的な予測を試みることができるのであろうか。巧妙に作られたフェイク画像を確実に見破る技術開発は可能か。人工知能自身が自分で改良、進化を始めた時、人類に対して脅威になることがないと断言できるのか。あるいは、一部の富豪が政府と結託してこうした技術を独占し、私たちを支配することがないのか。私には自信がない。
この他、遺伝子改変や人工知能が孕む大きな問題点として、ヒトの存在意義や尊厳が脅かされる可能性が挙げられる。しかし、これらの問題に対する検討はまだほとんどなされていない。これらの新しい技術のもたらす恩恵を享受しつつ、考えられる負の側面を避けるにはどうすれば良いのかを議論したい。
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