12-FPSS



第12回サイファイフォーラムFPSS


日時: 2024年11月9日(土)13:00~17:00

会場: 恵比寿カルフール C会議室


渋谷区恵比寿4-6-1
恵比寿MFビルB1

参加費: 一般 1,500円、学生 500円
(コーヒーか紅茶が付きます)

参加を希望される方は、以下まで連絡をいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

連絡先: 矢倉英隆(she.yakura@gmail.com)



プログラム

(1)13:00—14:00 矢倉英隆
   シリーズ「科学と哲学」⑥ 科学の創始者としてのプラトン

 これまでソクラテス以前の哲学者の歩みを見てきましたが、彼らは自然を構成している根源的な要素(アルケー)を探究しました。ヘラクレイトス(c. 540-c. 480 BC)やパルメニデス(c. 520-c. 450 BC)などの教えに影響を受けたプラトン(427-347 BC)は、広い領域について考えましたが、その中に、科学(知識)とは何かという問題があります。今回は、科学の創始者と考える人もいるプラトンを取り上げます。対話篇『テアイテトス』を指標として、現代の哲学者の思索なども参照しながら、科学とは何か、知るとは何を言うのかについて考えることにいたします。


(2)14:00—15:20 尾内達也
   TB-LB Theory 2.0

 TB-LB Theoryとは、Time being-Labour being Theoryの略で、時間と存在を切り離すことなく一体のものとして、「時間存在」「存在時間」として考察する時間理論です。以前発表したTB-LB Theory 1.0において、時間の本質を「社会関係」にあると規定しました。しかし、これは一面的で主観的な時間論でした。

 TB-LB Theory 2.0においては、これを批判的に推し進めて、時間を人間の社会活動によって生み出される「主観的時間」と、人間活動から独立した「客観的時間」の2つに分けて、この2つの時間の関係性を、社会的存在と自然的存在の関係性として捉え返して考察します。このとき、このふたつの存在の関係は、「物質代謝関係」として、表現できます。この「物質代謝関係」が、「主観的時間」と「客観的時間」を分節化しているのではないか、と考えます。この点を、ジェルジ・ルカーチと斎藤幸平氏の論考を手掛かりに考えたいと思っています。

 第2のポイントとして、時間と空間の関係をどう考えるかということがあります。TB-LB Theory 1.0において、時間の本質を「社会関係」にあると規定しましたが、空間との時間との関係性の視点で、これを捉えなおすと、たとえば、時計にしても、惑星間運動にしても、時間に先行して、空間への参照が存在していると言えます。同時に、商品空間に典型的なように、空間の中に、時間が労働時間として凝縮されています。この例における、「参照」と「凝縮」のように、自然的存在においては、時間よりも空間が先行し、社会的存在においては、空間よりも時間が先行します。この空間を、物質あるいは運動と言い換えると、アリストテレスの古代思想に近くなります。この時間と空間の関係についても、アリストテレスなどの古代思想や、物理学の時間と空間の関係についての考え方などを参照しつつ、考察を進めたいと考えています。


(3)15:30―16:50 阿戸 学
   日本の背骨としての仏教思想

 仏教は、紀元前5世紀のインドで、欲望を否定することで輪廻の運命から解脱することを目的として成立し、その後大乗仏教と小乗仏教に分離し、西域を経て中国に伝来し、日本には6世紀に朝鮮半島より強力な厄除けとして導入され、鎮護国家の道具として採用され、鎌倉新仏教によって日本独自の民衆の宗教となり、江戸時代に寺請制度として民衆コントロールの道具となり、その力を失って現在の葬式仏教に至る。以上が一般的な日本の仏教に対する認識であろう。しかし、現在の研究成果からはこの認識のかなりの部分が誤りであることがわかっている。仏教思想は、宗教そのもののみならず論理学、存在論、認識論、倫理学を含む学問体系であり、かつては、現代において科学的手法により事象を解析するのと同等の実践的な方法論でもあった。また、多数の仏教由来の用語が日常的に用いられていることからわかるように、日本人の思想の背骨の一部を仏教思想が形成していることが明らかにもかかわらず、現在において、仏教思想が思想的問題を解析するための方法論として用いられることは皆無と言って良い。

 本発表では、まず、史料に基づいたブッダの思想の時間的、地理的変遷を概説する。さらに、日本の仏教思想の共通点と独自性、および日本固有の思想(古神道)や外来思想(中国思想、西洋哲学等)との融合により、それぞれの時代の課題にどのように対峙してきたかを解説する予定である。仏教思想が、現在の日本の思想様式に前提として潜伏している部分について、あるいは、現在の思想的問題の指標となりうるのか、参加者の皆様と議論できればと考えている。









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